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看護のプロになろうと思ったきっかけ

心電図の波形

現在は副院長でもあり看護部長としても活躍するOさんですが、新人の頃は看護に対する熱意もなく、ただぼんやり言われるまま業務をこなしていたそうです。

 

しかし働き始めてから2ヶ月が経った頃、心不全で人工呼吸を付けているエンドステージの患者さんを受け持ったことで看護に対する意識がガラッと変わったそうです。

 

その日、夜勤だったOさんは血圧を測りに行ったのですがどうにもうまく血圧が測れない。
あれこれ試してみても、どうも血圧を測ることができない。
最終的に「あれっ、もしかしたら脈が止まっているのか!?」と気づいたんだそうです。

 

そこをたまたま通りかかった先輩ナースに聞くと…
「担当医を呼んで、救急カートをダッシュで持ってきて!」と指示を出され、心臓が止まっていることが分かり、どっと汗が噴き出したそうです。

 

すぐに救急処置が始まり、心電図の「波形を見てなさい」と言われたものの、心電図の読み方も分からず「どうなってる!?」の言葉に「さざ波です!」と答えてしまったそう。
その瞬間、病室が凍りついたとか。

 

この時の患者さんは、結局亡くなってしまい自分の無力さや知識のなさが患者さんに迷惑をかけてしまうことを痛感したそうです。

 

言われたことだけを、ただやっていればいい。
看護師というのはそういう仕事ではありません。
常に学んでいく姿勢が必要なのですね。

 

Oさんはこの体験から、看護のプロとは何かを考えるようになり、改めて看護のプロになりたいと思うようになったそうです。


限られた人生をどう生きるかを選択するのは患者。看護師ができることとは?

6年ほど外科病棟で働いていたOさんですが
患者さんとのやりとりでも学ぶことが多かったそうです。

 

外科病棟は厳しい状態の患者さんが多いため、痛みの訴えが非常に多いのですがむやみに薬を服用させるわけにもいかず、痛みの緩和ケアに困っていたそうです。
しかしある時、痛みを訴える患者さんの背中をさすったところ、「痛みが楽になった」とすっと眠ってしまったそうです。
それから、時々痛みを訴える患者さんの体をさすると痛みの訴えがなくなることに気付いたのだそうです。

 

撫でたからといって痛みが消えるわけではないのですが、痛みとは単純な痛みだけではなく、不安や寂しさが痛みに?がっているのかもしれないと気付き、これこそが医師の行う治療とは異なる、看護の在り方なのではと思うようになったそうです。

 

ある時にはまったく薬を飲んでくれない患者さんがいて、さじを投げた医師が「治療する気がないなら退院してくれ」となってしまったのです。
すると患者さんは「退院する」と本当に退院してしまったそうです。

 

それから3ヶ月、その患者さんはとても症状を悪化させて戻ってきたそうです。
しかしその時の表情は晴れやかなものだったのです。

 

その患者さんは会社を経営し、病弱な奥さんもいたので病状を知り、残された家族や従業員が困らないようにと、色々整理してきたのだそうです。
そして延命治療は全て拒否し、家族に見守られながら静かに旅立ちました。

 

人の生き死には、他人の尺度では測れないものがある。
治療だけがすべてではなく、限られた人生をどう生きるかは患者さんそれぞれの自由なのです。
そしてその瞬間を支えられるということの素晴らしさを感じたそうです。

 

Oさんはその後、改めて看護について学びたいと考えるようになり、大学へ進学し、教育や衛生行政に関わるようになったそうですが、この時の経験が看護師として働く上でとても役に立っているのです。